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最高裁判所第一小法廷 昭和47年(オ)957号 判決

上告人

好本精

右訴訟代理人

西田公一

更田義彦

被上告人

石神井公園住宅管理組合

右代表者

牧野正夫

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人西田公一、同更田義彦の上告理由第一点について。

憲法一三条及び二九条の規定は、直接私人相互間の関係に適用されるものではないというのが当裁判所の判例の趣旨とするところである(最高裁昭和四三年(オ)第九三二号同四八年一二月一二日大法廷判決・民集二七巻一一号一五三六頁参照)。原審の確定したところによれば、所論組合規約及び建築協定は、日本住宅公団が建設した石神井公園団地分譲住宅の買受人全員を組合員として組織された被上告人組合の創立総会において、上告人を含む出席者全員の一致で可決承認された後、総会欠席者を含む被上告人組合全員の書面による合意により設定されたものであつて、右規約及び協定によつて律せられる被上告人組合と組合員との間の法律関係は私人相互間の関係であるから、これに憲法の右規定が直接適用されるものでないことは右判例の趣旨から明らかであり、また、所論協定のバルコニー改築禁止の規定が公序良俗に反するとはいえない。したがつて、論旨は、採用することができない。

同第二点ないし第四点について。

所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして是認することができる。そして、その確定した事実関係によれば、本件バルコニーは被上告人組合の管理する共有物であり、上告人が本件バルコニーに加えた原判示の工事は、バルコニーの改築を禁止した判示の建築協定に違反するものであつて、上告人はその加えた工事部分を撤去して復旧すべき義務があるとした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は異なる見解に立つて原判決を論難するものであつて、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(藤林益三 下田武三 岸盛一 岸上康夫 団藤重光)

〈上告理由〉省略

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